ベルギーといえば、ベルギービールやベルギーチョコレートが有名だが、ベルギーの首都ブリュッセルは「街を歩けばダンサーに当たる」と言われるほど、世界中からダンサー、振付家、パフォーマーなどが集まるダンス都市なのだ。バレエの歴史を大きく変えた振付の巨匠、故モーリス•ベジャール率いる「20世紀バレエ団」(現在はローザンヌ)の活動拠点はベルギーだった。今月末に来日公演を予定しているベルギーのシャルロアダンス劇場ディレクター/振付家のPierre Droulersは、フランスリヨンを拠点に活動する、才能溢れる若手ダンスグループ「Loge22 collective」と共同制作をしたダンス作品「 空気と風 2010- du l’air et du vent-」を横浜赤レンガ倉庫1号館にて初来日公演をする。
画家の父を持つ振付家Pierreのダンス作品ができあがってゆく過程は、まるで、画家が何もない白い空間に線を描き、空間を埋めていくかのようだ。そして、作品の細部にまで行き渡るPierreの美的センスと大胆な潔さのある振付は、見るものを新たなる時空へと誘う。
Pierre Droulersは「今回の作品 du l’air et du vent 2010では、余計なものをそぎ落として、人間の体の可能性に迫ってみたかったんだ。今までに大小さまざまなスタイルのダンス作品を作ってきたけど、ダンスの真髄はやはり体の動きだと思うようになっている。」と語る。作品の中ではダンサーの体が、どこまでもしなやかに、とても力強く見えたかと思えば、次の瞬間には、まるで風や空気のように軽く消えてしまいそうになったりする。それが振付家Pierreによる魔術なのだ。空間、光、音、動きのバランスが絶妙で洗練されていて、その道に熟達した者が持つ、どっしりとした安定感が底辺に流れている。